配当所得の課税方法を比べるイメージ
分配金入門公開:2026年9月4日

配当の課税は3択|総合・申告分離・申告不要で変わる5つの扱い

上場株式等の配当には、総合課税・申告分離課税・確定申告不要制度の3つの選び方がある。何もしなければ源泉徴収だけで完結し、税率は20.315%。ただし総合課税を選べば配当控除が使え、申告分離を選べば譲渡損失と通算できる。逆に、この2つは同時には取れない。どれを選ぶかで変わるのは税率だけでなく、配当控除・損益通算・扶養控除等の判定を含めた5つの扱いだ。
筆者:/本記事は配当所得の課税方法を整理した情報提供であり、特定商品の購入を勧めるものでも、税務・投資の個別助言でもありません。株式・投資信託は元本割れの可能性があり、運用成果はすべて投資者本人に帰属します。制度・税率は変わるため、判断の前に国税庁の一次情報と所轄税務署でご確認ください。

配当が振り込まれるとき、すでに税金は引かれている。だから「もう終わった話」と思いがちだが、実は引かれっぱなしにするか、申告して取り返すかを自分で選べる。しかも選択肢は3つあり、それぞれ得意な場面が違う。配当好きの目線で、どれをどう選ぶかを整理する。

配当の課税方法は3つある

国税庁タックスアンサー No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」(令和7年4月1日現在法令等)によれば、配当所得は原則として総合課税の対象だ。ただし上場株式等の配当等(大口株主等が受けるものを除く)は、総合課税ではなく申告分離課税を選べる。さらに上場株式等の配当等は、金額にかかわらず確定申告を要しない扱いも選べる。ここから3択が生まれる。

受け取る段階では、上場株式等の配当等は15.315%(他に地方税5%)の税率で所得税および復興特別所得税が源泉徴収される。上場株式等以外の配当等、および大口株主等が受け取る上場株式等の配当等は20.42%(地方税なし)だ。大口株主等とは、発行済株式の総数等の3%以上に相当する数または金額の株式等を持つ個人をいう。

3択といっても、誰でも3つ選べるわけではない。大口株主等が受け取る上場株式等の配当等と、上場株式等以外の配当等は総合課税の対象で、申告分離課税や(少額配当を除き)確定申告不要制度を選べない。非上場の会社から配当を受けている人は、選択肢がそもそも狭い。

総合課税を選ぶと何が得か?

総合課税は、各種所得を合計して所得税額を計算する方式だ。給与や事業の所得と合算されるため、適用される税率は累進税率になる。ここで効いてくるのが配当控除で、No.1330は「総合課税の対象とした配当所得については、一定のものを除き配当控除の適用を受けることができます」と書いている。

配当控除の率は No.1250「配当所得があるとき(配当控除)」に定められている。その年分の課税総所得金額等が1,000万円以下なら、剰余金の配当等に係る配当所得の金額×10%、証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額×5%(特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託は2.5%)。1,000万円を超える部分については率が半分に落ち、剰余金の配当等が5%、証券投資信託が2.5%になる。控除額は算出税額が上限だ。

数字で見る:配当30万円のケース

国内株の配当を年30万円受け取り、源泉徴収で所得税15.315%=45,945円が引かれているとする(別に地方税5%)。

課税総所得金額等が500万円の場合。所得税の速算表では3,300,000円から6,949,000円までが税率20%なので、配当に対する所得税は300,000円×20%=60,000円。ここから配当控除300,000円×10%=30,000円を引いて30,000円。復興特別所得税2.1%を加えて30,630円になる。源泉徴収済みの45,945円との差、15,315円が戻る計算だ。

課税総所得金額等が200万円の場合。税率は10%なので所得税は30,000円。配当控除30,000円と同額のため、控除後は0円。源泉徴収された45,945円が全額戻る形になる。

ただし総合課税を選ぶと配当所得が合計所得金額に加わる。国民健康保険料や配偶者の扶養の判定に影響することがあるので、所得税だけを見て決めない。

外国法人から受ける配当等は配当控除の対象外だ。ほかにも投資法人から支払を受けるべき配当等、特定目的会社から支払を受けるべき配当等、特定目的信託に係る配当等などが対象から外れている。J-REITの分配金が配当控除に使えないのは、この「投資法人から支払を受けるべき配当等」に当たるためだ。

申告分離課税は何のためにあるか?

申告分離課税の税率は No.1331 のとおり20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%、地方税5%)。源泉徴収の合計と同じ率なので、税率だけを見れば申告する意味はない。にもかかわらずこの選択肢がある理由は、上場株式等に係る譲渡損失と通算できる点にある。

No.1331は「上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合またはその年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額のうち、前年以前で控除されていないものがある場合には、一定の要件の下、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等の金額から控除することができます」としている。売却で損が出た年に配当を受け取っているなら、この経路で税負担を下げられる。

代わりに失うものがある。「申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得については、配当控除の適用はありません」と明記されている。損失通算と配当控除は両取りできない。ここが3択でいちばん取り違えやすい分岐だ。

確定申告不要制度はどんな人に向く?

上場株式等の配当等(大口株主等が受ける場合を除く)は、金額にかかわらず確定申告が不要だ。上場株式等以外でも、1回に支払を受けるべき配当等の金額が「10万円×配当計算期間の月数÷12」以下であれば少額配当として申告を要しない。配当計算期間が1年を超える場合は12月として計算し、1月に満たない端数は1月として数える。

この制度は、1回に支払を受けるべき配当等の額ごと(源泉徴収選択口座内の配当等は口座ごと)に選べる。すべてを申告するか、しないかの二者択一ではない。

注意点もある。確定申告不要制度を選んだ配当所得に係る源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引けない。取り戻す余地を捨てる代わりに、合計所得金額に含まれないという性質を取る選択だと考えるとわかりやすい。扶養に入っている人や、所得の基準がある制度を使っている人には、この性質が効く。

3つを並べるとどこが違う?

No.1331が整理している比較を、そのまま並べる。

上場株式等の配当等の課税関係(国税庁No.1331の整理より)
項目総合課税を選択申告分離課税を選択確定申告をしない
借入金利子の控除ありありなし
税率累進税率所得税15.315%/地方税5%源泉徴収のみ
配当控除ありなしなし
上場株式等の譲渡損失との損益通算なしありなし
扶養控除等の判定合計所得金額に含まれる合計所得金額に含まれる合計所得金額に含まれない

税率の行だけを見て選ぶと、下の3行を落とす。配当収入で生活の一部をまかなうつもりなら、むしろ効いてくるのは下の3行のほうだ。

選ぶときに間違えやすい3点

ひとつ目。申告する配当は全額まとめて同じ方式にしなければならない。No.1330は「申告分離課税の選択は、確定申告する上場株式等の配当所得の全額についてしなければなりません」としている。A社の配当は総合課税、B社は申告分離、という使い分けはできない。

ふたつ目。一度選ぶと後から変えられない。No.1331の注記は「確定申告において上記のいずれかを選択した場合は、その後、修正申告や更正の請求において、その選択を変更することはできません」と書いている。申告してから有利不利を計算し直しても、戻れない。

3つ目。令和5年10月1日以後の判定には同族会社分が乗る。同日以後に支払われる上場株式等の配当等については、支払を受ける人と、その人を判定の基礎となる株主として選定した場合に同族会社に該当する法人が保有する株式等の割合を合算し、3%以上なら大口株主等と同様に総合課税の対象になる。自分名義だけで3%未満でも、法人保有分と合わせると届くケースがある。

私の場合、配当は取り崩さずに趣味の予算に回している。だからこそ、受け取った額そのものより「どの選び方をした年か」を記録しておく価値があると思っている。翌年の申告で同じ判断を繰り返すか変えるかは、去年どちらを選んだかを覚えていないと決められない。

よくある質問

配当は申告しないほうが得?

一概には決まりません。上場株式等の配当等は源泉徴収の合計が20.315%なので、総合課税で適用される税率がそれより低く、かつ配当控除が使える人は、申告したほうが有利になり得ます。逆に扶養や所得基準のある制度を使っている人は、合計所得金額に含まれない申告不要が向くことがあります。

投資信託の分配金でも配当控除は使える?

証券投資信託の収益の分配金は配当控除の対象ですが、率が違います。課税総所得金額等が1,000万円以下の場合、剰余金の配当等が10%であるのに対し、証券投資信託は5%(特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託は2.5%)です。特別分配金(元本払戻金)はそもそも所得ではないため、対象外です。

損失通算と配当控除は両方使える?

使えません。上場株式等の譲渡損失と通算できるのは申告分離課税を選んだ場合で、その配当所得には配当控除の適用がありません。売却損が出た年か、そうでない年かで、有利な側が入れ替わります。

非上場株の配当はどうなる?

上場株式等以外の配当等は総合課税の対象で、申告分離課税は選べません。源泉徴収は20.42%(地方税なし)です。ただし1回に支払を受けるべき金額が「10万円×配当計算期間の月数÷12」以下なら少額配当として申告を要しません。

配当控除に上限はある?

あります。No.1250は「配当控除の金額は算出税額を限度とします」としています。控除しきれない分が現金で戻ってくる仕組みではありません。

参考・一次情報:
・国税庁 No.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm
・国税庁 No.1331「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
・国税庁 No.1250「配当所得があるとき(配当控除)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm
・国税庁 No.2260「所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
・住民税の扱い・保険料への影響はお住まいの市区町村で確認

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(このブログの中の人)
高配当株・ETF・投資信託の分配金で趣味を楽しむ個人投資家。利回りの数字より「お金の出どころ」を確かめる派。自分で口座を動かしながら、配当・分配金まわりの仕組みを噛みくだいて書いています。

最終更新:2026年9月4日